今年度の「ツーリズムEXPOジャパン」が盛況のうちに終了した。以前に比べて、BtoB、BtoCのビジネスマッチングの場としての様相を濃くしたEXPOだった。それだけに、来場者に真剣にアピールしようという熱意あふれるブースが多かった。
筆者がアドバイザーを務める全国観光圏協議会も、今回初めて共同で出展した。ブースでは連日、13観光圏の担当者が交代で滞在プランをアピールした。また、商談会をこなし、9月22日には記者発表会・シンポジウムも開催した。
周知のように、観光圏は「観光圏整備法」に基づき国土交通大臣の認定を受けた地域である。5年間の国の支援を受けながら、ゴールデンルートに代わる新たな日本の顔として国内外から選好される「ブランド観光地域」を目指している。
その一環として、2年前から共同で世界に発信を始めた。共通テーマは、UNDISCOVERED JAPANだ。「南北に長い日本列島には多様な気候と自然がある。幾重にも折り重なる文化がある。あなたの知らない日本がある」という意味だ。
このテーマは友人のアレックス・カーさんに選んでもらったものだが、幸い反応は極めてよく、JTBやJALなどが連携を組んでくれた。今回のツーリズムEXPOでは、そんな連携の中で磨かれてきた滞在プランをまとめて発表した。
UNDISCOVERED JAPANのテーマに基づく滞在プランには他にはない特色がある。インバウンド観光客に日本ならではの伝統文化や暮らしを、住民との交流を通して安心して体感してもらい、リピーターになってもらうための仕掛けだ。
まず一つ目は、各観光圏が日本を代表する、他地域と差別化された独自の価値を徹底的に追求していることだ。にし阿波観光圏が発信するブランドコンセプト「千年のかくれんぼ」はすでに多くのインバウンド観光客を魅了している。
二つ目は、ブランドコンセプトを体感してもらうために空間形成や2次交通にも目配りしているだけではなく、確かなサービス品質の提供に向けて日本初となる宿泊施設などへの観光品質認証制度「サクラクオリティ」を導入していることだ。
三つ目は、日本版DMO候補法人である「観光地域づくりプラットフォーム」によるワンストップサービス窓口の整備だ。これにより、日本各地に点在する13エリアの組み合わせにより多様なニーズに対応できるようになる。
記者発表会、シンポジウムの会場では、13観光圏の代表がブランドコンセプトにふさわしい衣装を着けて滞在プランをアピールした。幸い、全国観光圏協議会と提携したいという事業者からの申し出が相次ぎ、確かな手応えを感じた。
インバウンド観光は徐々に地方に浸透するとともに、量ではなく質が問われる時代になった。ブランドと品質を徹底的に追求する全国の観光圏が、そのけん引役になると確信している。
(大正大学地域構想研究所教授)